Salon de la Musique

夏も近づく八十八夜っというわけで、みなさまお元気でしょうか。
楽器の見本市"Salon de la Musique"に行ってきました。去年までは"Musicora"の名前で親しまれてきました。主にヨーロッパを中心として、世界各国から集まった、大小さまざまな楽器メーカーや楽譜メーカーが軒を並べています。
パリ音楽院の隣にある、Grand halle(グランタール)という大展示場で行われ、民族楽器や弦管楽器のアトリエ、楽譜屋、楽器メーカーの他、楽譜出版社、オーケストラのブースまで、有りとあらゆる展示があります。毎年イースター休み(4月の最終日曜日をまたぐ前後の二週間)の前後に開かれ、今年は4/29〜5/3の五日間。

Grand halle
これがGrand Halle。昔は牛などのとさつ場だった。
写ってないけど、この左隣がパリ音楽院。右隣がCité de la Musiqueという
コンサートホール。アンサンブル・アンテル・コンテンポランの本拠地でもある。

今年は2000年ということもあって、記念のモデルを発表しているメーカーが目立ちました。僕もだいたい毎年行くのだけれど、今年目立ったのはマルチメディアを利用したもの。音楽編集ソフトや、インターネットの音楽配信会社など、昨年とは比べものにならない程増えていて、今後の音楽シーンを象徴するかのようでした。

入場料は50フラン(約700円)。僕は一応パリ音楽院の学生と言うことでタダで入れてもらえます。中はピアノ、管楽器、弦楽器、電子楽器、出版社などと楽器の種類ごとに分かれていて、最初に目に付くのが出版社のブース。LeducやLemoineといったフランスの出版社はもとより、北欧の怪しげな出版社まである。

その北欧の出版社のブースでSax、Cello、Pianoのトリオの楽譜を発見。「これください!」と手渡すと、フランス語を解さない店員が「Do you speak English?」。僕はいつもの癖で「
Oui !!!」と自信を持って言ってしまった。店員は余りとまどう様子もなく(←少しはつっこんでくれ)、僕がサクソフォニストであることを確認し、「それならこちらの楽譜を貴方にプレゼントしましょう。もし住所を教えていただけるなら、うちで扱っている全てのサクソフォーン関係の楽譜もお送りしますよ。」店員はざっと見ても20作品はあると思われるサックス関連の蔵書ファイルを僕に見せながら、「これら全て興味がありますか?」……(す、す、す、すごい! 確かに演奏されなければ楽譜は売れないけど、こんな沢山あげちゃってダイジョブなのかなぁ。古くなって茶色く変色した楽譜を定価で売っている某○educ社は見習ってくれ)などと思いつつ、結局「タダ」の一言の魅力に勝てず、図々しくも全て送ってもらえるようお願いしてしまった。ラッキー!!!

続いてピアノのブースの方へ。ものすごい数のピアノが一度になっている。「ぐわ〜ん、ぐわ〜ん」ほとんどアマチュアのピアニストなのだろうけど、ショパンからジャズまでみんな競うように試奏している。見た感じほとんどの人は
自己陶酔型で、まるで自分のコンサートをやっているかのようだった。思いっきりさらってる音楽学生風もいた。(なんでピアニストって恥ずかしげもなく、こんな公衆の面前で弾きまくれるんだろう?それがピアニストである所以なのか…?しかしながら、そこそこ弾いている人が多い。フランスのアマチュアは馬鹿にできんなぁ・・・)などと思いつつYamahaのブースへ。

ここへ来たのには訳があって、僕の友達のサックスカルテットとチューバカルテットが演奏するのだ。パリ音楽院の学生は毎年この催しの期間中、デモ演奏などのアルバイトにかり出されています。


Quatuor"Vivace"左からアレクサンドル・ドワジー、キャトリーヌ・クルトマンシュ、クリストフ・ボワダン、
オリビエ・ピオ。ヤマハカスタムのデモ演奏で、30分ほどのミニコンサートをやっていた。

このサイトに来たことがある方はアレクサンドルとクリストフはもうおわかりですな?写真は初公開です。このカルテットは確か一昨年前に結成してYamahaのアーティストとして活躍しています。この五月に行われたFNAPECというフランス国内の室内楽コンクールにも入賞したようです。これからの活躍が大いに期待されるカルテットです。

もう一つここで聴いたのがTubaカルテット。BBSにも良く投稿してくれる「
はげじん」こと橋本晋哉氏が出演。
これはヤマハのサイレントブラスのデモンストレーション。上のサックスカルテットがブース脇に設けられた特別小ホールの中で演奏していたのとは異なり、思いっきりピアノのブースのど真ん中でやってました。ふつう、既に周りにいる"にわかピアニスト"たちの交錯するピアノ名曲集の大音量にチューバ四本を足したら、さすがに周りにいるスタインウエイやカワイ、ベヒシュタインから文句が出そうなのだが、さすがサイレント、ヘッドフォンをしないと全く音が聞こえないのだ。
「おまえらホントーに吹いとるんかい!!!」と思ってしまうぐらい聞こえない。正直言ってこれにはびっくりだったのだ。


右のちゅーびすとが橋本氏。上についてるでかい黒い物体がサイレントチューバだ!!!
部屋においてあると、
黒い巨大なごみ箱のようでなかなか笑える。

このほかにもサイレントヴァイオリンとチェロ、サイレントグランドピアノを使ったTrioのデモンストレーションもあったけど、そっちの方は弦楽器の音が結構聞こえた。
チューバをやっていて自宅での練習をあきらめていた人、これは朗報でっせ。上の橋本君はこの間夜中の1時頃これを使って思いっきりボーン・ウイリアムスのコンチェルトを吹いとったけど苦情無かったし…。かといって文句が出ても知りませんよ。

サイレントグランドピアノにも結構驚いたのだけど、これはキーのアクションを全く変えずに、打鍵をセンサーで感知して、MIDI音源でヘッドフォンから音を出すと言うもの。最新技術はすごいのぅ。ピアノ部門は結構最新テクノロジーを導入していて、いわゆる自動演奏ピアノに、その録音時の映像をコンピューターでシンクロさせるというピアノ。音はともかくとして、自動のものにしてはエンターテイメント性に優れているなぁと思った。ちなみにこのピアノは2000年のお祝いに、Yamahaが作ったもので世界に一台しかないそうである。


ピアノの左側にあるディスプレイとそのちょっと奥にある大型ディスプレイから映像が出る。
タッチをそのまま記憶させ機械的に弾かせているので、この手のものにしては臨場感がある。

ピアノのブースを廻っていくうちに、いろいろ面白いピアノを発見したので写真を紹介します。

一見普通のグランドピアノが二台並んでいるように見えるけど、なんと中央部がくっついているじゃないですか。これで楽しく二台ピアノのあわせが出来ますね。ラベック姉妹が使うのでしょうか?グランドピアノを二台置くスペースが無いときには便利ですね(っておい!)。でも問題は蓋。ピアノ二台分の大きさの蓋だけに巨大。全開時は3mもの高さになろうか?ちょっと怖いです。これを開閉するときには神経を使うでしょうね。半開とかもできるのだろうか…。

次のピアノはこれ!!!水槽付きピアノだ(笑)金魚が泳いでいるのが分かりますか?(爆)こんなピアノがあったら楽しいけど、練習にならないだろーな。これを作った人は練習が嫌いで、小さい頃から先生に「少なくとも一日一時間はピアノの前に座りなさい。」なんて言われた経験から、「よっしゃ!!!一時間座りゃーいいんだろ座りゃー!!」なんて事で作ったんだろーな。


写真左下は拡大したところ。金魚の他にもグッピーが泳いでいた。いいセンスしてますね(^_^;)

…という感じで、ピアノ業界はかなり頑張っていました。

ともかく有りとあらゆるブースがあるのだけど、例えば民族楽器や古楽器のブースも見受けられました。下の写真は古楽器商。壁には古楽管楽器が沢山かけてありました。
左から二番目の黒くてS字型の楽器は「Serpant(蛇)」と言って、低音の金管楽器。B管です。指で穴をふさいで音を変えます。HaydnやBeethoven、新しくはWagnerなんかも使ったようです。結局はバストロンボーンが出てきたことで姿を消したようですが…。フランスではファンファーレや教会音楽の伴奏として活躍したそうです。
その右の蛇の頭が付いているのはトロンボーンで、馬に乗りながら片手で演奏します。その真下にあるのはSaxみたいなのだけれど、金管楽器のようです。名前など分かる人がいたら教えてくださいね。
                     


他にもいろいろな古楽器があったのだけれど、横にいる店の主人に
「写真は一枚だけ!!」っていわれてしまった。べつにいいじゃん!減るもんじゃなし!!ケチ!!!

とうとう管楽器業界のブースに来ました。といってもその辺の楽器店とあまり変わり映えがしなかったのだけれど…。中でも目立っていたのがSelmerのブース。やはりサックスだけで世界に名を知られるだけありますね。人の数も管楽器関係では一番多かった気がする。
ここの目玉はこれ。シリーズVの2000年スペシャルモデル!!!○ナギサワのシルバー○ニックのまねか?総銀製のシリーズV。試せなかったのでどんな音がするのかは知らないのだけど、友達の話では結構イけてるっていうはなし。他にもシリーズVのテナーでジャズモデルを発表していました。普通のラッカー仕上げではなく、ちょっと古びた感じのする管体で、どうもマークYの特徴に近づけたらしい。値段は付いていなかったので分かりません。特別注文らしいですよ。


小指のローラーまでが銀色で統一してるのは好きずきでしょう。でも見た目はとってもかっこいい。

最後に他のブースをちょこちょこと見て回るうちに、怪しい店を発見。なにしても壊れない総プラスチック製のクラリネットとか、半永久的に使えるリードとかともかく怪しいものばかりをおいている。
この店でついに見つけました、サイレントサックス(笑)!!!要するにミュートなんだけど、ホントに使えるんかい?

この袋みたいなのにサックスを入れて、ネックだけを外に出し手は脇にあるポケット状の入り口から入れて…。こんなものをマジで作っていると知って笑えました。しかもこれに付いている説明書がまたおかしい。「この状態でネックをとり、横のポケットにしまうだけで片付けが完了します。これは便利!!」とか書いてあんの(笑)。他にもこのケースがリュックサックのように背負えるらしく、自転車に乗りながらこのケースを持ってる写真があったりして…「かっこいい!!!」とか書いてあって。しかもこのカラーリング。おしゃれよね〜(^_^;)
これ、是非試してみたかったんだけど閉館間近だったので、時間切れでOut!とても残念です。誰か使ってみたことのある人、持っている人は情報をくださいね。あ、値段は1万円ぐらいでした。安い(笑)!!

今回は特にアコースティックの楽器にこだわってレポートしましたが、このほかにも電子楽器館があって、そちらもかなりの人でにぎわってました。フランスにはものすごい数の音楽愛好家がいるのだなぁと改めて実感しました。おわり。

[Top] [Marche] [Archives]